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LOVE PENTAXYZ

News & Tips about PENTAX products, and daily photos by PENTAX cameras.

HDコーティングとABCコーティングとsmcコーティングの話




pentax memoさんの9/19の日記に HDコーティングと、AeroBrightコーティングとの関係に関する素朴な疑問が載っていたので、その辺のフォローも兼ねて、以前に書いたHDコーティングの特許の話に関する続きを久しぶりに書いてみました。

※ akahigegさん、各日付ごとにアンカーが、、、欲しいです。(ここに書くなよ
※ akahigegさんから「実は日付ごとのページ生成してるよ。」と教えて頂いたのでリンク修正。Thanks!

今回は、主に、既存のコーティング技術(smcコーティングやABCコーティング) と比較したときの、HDコーティングの性能に関して、なんやかんや書いてみました。

注意書き

smc はSuper Multi Coatingの略なので、「smcコーティング」と書くと、「Coating 」が重複するのですが、smcだけだとHDコーティングに対してバランスが悪いので、以下「smcコーティング」と記載しています。ABCコーティングについても同様。

レンズのコーティングについて (最初に)

レンズのコーティングは、反射光の発生を抑えたり、レンズ筐体内での迷光を抑える役割を担っています。
このため、単純に反射光や迷光を抑える役割のみ追求するのであれば、(反射光が生じる)レンズ面全てにコーティングがあるのが理想的です。

しかしながら、実際には、コスト面や、物理的な問題(コーティングの硬度や引張強度、RGB各波長ごとの透過率の異なりなど)などの要素を考慮する必要があり、コーティングをする面、及び、各面にどういったコーティングを施すかは、慎重に決める必要があります。

話をすっ飛ばしますが、強引にまとめると、

種々の理由により、いい感じのレンズコーティングは限定的にしかされません。 (たぶん)

特に、PENTAXのABCコーティングのように、ナノレベルの微細構造を伴うコーティングは、コスト及び硬度の問題から、Nikon, Canonも含め各社とも一部のレンズ面にしか行っていないようです。


余談1

なお、自分の記憶が正しければ、PENTAXの場合は、監視カメラ用レンズの製造で培ったノウハウから、全レンズ面に少なくとも何らかのコーティングを施している旨の発言をしていたと思います。

余談2

公式の図解によれば、ABCコーティングは、smcコーティングの上に重ねるっぽいです。たぶん、反射を抑えるために、ナノレベルで凹凸構造を作ってるのかなぁと。(適当に書いたので、正しくはよくわかりません。誰か教えてください)

HDコーティングの特長

HDコーティングと、従来のsmcコーティングの性能差は、発表当時のプレスリリースの資料が分かり易いです。
HDコーティングの特長は、大きく分けて、以下の3つです。
  • 低反射率 (≒高透過率)
  • フラットな反射特性
  • 高耐久性
これらについて、各別にざくっと説明を加えてみます。

低反射率

HDコーティングでは、全体として smcより反射率が半分以下にまで下がっています。
(要は、コーティングとしての性能(≒透過率)が良くなってる、ってことです。)

HDコーティングは、おおむね可視光域で、反射率 0.1%といったところでしょうか。
他社の最新のコーティング(詳しくは後述)並みの性能と思われます。

なお、

におけるPENTAX へのインタビュー記事を見ると、HDコーティングは、DA★55mmに採用されているABCコーティングよりは劣っています。
この2つに関しては、反射率0.1%以下での争いなので、もはや僅差ですが…。

ざっくりいえば、
ABCコーティング > HDコーティング >> smcコーティング

という感じでしょうか。

フラットな反射特性

また、従来のマルチコーティング(*)では、波長 500~550nmあたりをピークとして反射率が高かった(緑成分の反射が多い)のに対し、可視光域全域で反射率がフラットに抑えられています。

(*) 従来のマルチコーティングが何を意味しているかは不明です。smcのような気がするのですが、明記はされていません。

これにより、レンズ系全体でのコーティングの最適化設計が楽になった(開発の負担が減った)のではないかと思われます。

マルチコートだと思った?残念!ノンコートでした!

また余談

反射特性が色(波長)により異なる場合、レンズ光学系全体で見たときに、色の偏りが生じないようにコーティングを設計する必要がある、という話を開発者の方がされていたと思います。また、PENTAXの場合、光学系全体でみたときの各色の透過率を、レンズごとにばらつかないように(PENTAX特有の青と緑が出るように) 調整されているとも。出典は失念しました…。

反射特性については、ABCコーティングは不明です。個人的には、smcコーティングの上に重ねる1層でしかないことからして、それ自体の反射特性はあまり問題でないような気もします。

高耐久性

上記インタビュー記事にもありますが、HDコーティングは硬度に優れている様です。

特許文献を見た感じでも、実際強そうです。(多層膜の材料が、基本的にガラスそのものなので、かなりハンドリングし易いのではないかと思ったりします。)

この点、ABCコーティングは(シリカエアロゲルで、なおかつナノレベル(原子数層~数十層の厚み)なので、まぁ言わずもがな)かなり脆いようで、レンズ前面は当然のことながら、熱膨張で比較的大きな応力がかかるような面にも適用し難いようです。

他社技術

ざっと調べた限り、他社は軒並み、反射率0.1%以下のコーティングは、一部のレンズ面にのみ適用してる感じです。ABCコーティングと同じく、レンズ表面にナノ構造を形成する類の技術なので、コストやハンドリングのしやすさ(耐久性)には難ありといった様子に思えます。

現状のPENTAXコーティング技術について勝手にまとめ

以上、駆け足でしたが、HDコーティング、マジヤベェよ。
PENTAXの数少ない他社をリードしている技術なだけあって気合がハンパないですね!

圧倒的だな、我がPENTAXのコーティング技術は!!

閑話休題。

今後のPENTAXのコーティングに関しては、

  • smcコーティングは徐々に廃止して、HDコーティングに移行。
    • smcとHDコーティングのコスト差は少ないとのコメントがあったけど、
      廉価レンズにのみ残る可能性はあるかも
  • ABCコーティングに関しても、(極限まで反射率を抑えたいような場合を除く) 多くのレンズでは、HDコーティングのみで十分との判断が下され、廃止。
じゃないですかね。(てきとう予想)

HDコーティングに関する課題として、以前、「レンズ前面に使うSPコーティングとの重ね合せができない」との設計者のコメントがあったような気がするのですが、これが解決すれば、本格的にsmcがなくなる日がくるかもしれないかなぁと。

あ、だから、DA★55mmは、基本レンズ面にはsmcコーティングがされてて、一部のレンズ面だけABCコートね。これ、テストに出るから赤ペンひいとくように!